自作キーボードMalicAcid A65について

こちらは自作キーボード MalicAcid A65 の紹介記事になります。

MalicAcid A65は、ALPS軸のスイッチとApple Extended Keyboard用のキーキャップを気軽に楽しむというコンセプトで開発したキーボードです。

試作機であるA70Rをもとに調整を重ね、どうにか満足のいくものができました。

MalicAcid A65とは

1987年から1994年にかけて生産されたApple Extended Keyboard(以下、AEK)は、優れたデザインと高級キースイッチであるALPS軸の打鍵感によって、今でも人気の高いキーボードです。

ですが、接続端子がADBという廃れた規格のため、現在市販されているPCはもちろん、Macでも使用することができません。

そのためAEKのキーキャップとキースイッチを新たな基板やケースに移植して、リメイクした作例をReddit等でしばしば目にします。

MalicAcid A65は、それらの作例と同様に、AEKを現代的なUSB接続の65%キーボードに仕立て直すための自作キーボードキットです。

なお、Malic Acidとはリンゴ酸のことです。Apple Extended Keyboardの製造元企業(Apple)と、A65で使用しているGL516テンプレートの開発者様(サリチル酸さん)を勝手にリスペクトした名前になっています。

MalicAcid A65の特徴

GL516互換キーボード

GL516は自キ温泉ガイドのサリチル酸さんが設計された汎用アルミ切削ケースです。

自作キーボード用65%ケース『GL516』を設計した話をするよ! - 自作キーボード温泉街の歩き方

MalicAcid A65は、このケースの使用を想定したGL516互換キーボードとして設計しています。別売のGL516ケースを購入していただくことで、高級感のあるアルミ削り出し筐体のキーボードとして使用することができます。

GL516のソリッドなアルミ筐体は、AEK用のキーキャップやMac本体とデザイン的な親和性が高く、筐体そのものの重量によって打鍵感や打鍵音の向上も見込めます。

また、A65以外の互換キーボードにも使い回すことができますので、一度購入すると末永く楽しめるというメリットがあります。おすすめです。

GL516ケースは安心の国内ベンダーである遊舎工房さんで取り扱っていますので、ぜひ購入してA65と組み合わせてみてください。

ケースレスボトムプレートにも対応

なお、GL516互換キーボードには、専用ケースを使用せずに組み立てることが可能な、ケースレスボトムプレートも用意されています。アルミ筐体の見た目や打鍵感などは失われますが、とても安価に組み立てられるのがメリットです。

A65はこのケースレスボトムプレートにも対応していますので、GL516ケースが入手できなかった方や、気軽に試してみたい方はこちらも検討してみてください。


ALPS軸キースイッチ専用設計

現在の自作キーボードキットで使われているキースイッチは、Cherry MXスイッチ、またはその互換スイッチが主流です。ですがMalicAcid A65では、俗にALPS軸と呼ばれるアルプス電気株式会社製のキースイッチを使用します。

ALPSスイッチの詳細については、下記のリンク先を参照してください。

scrapbox.io

zeriyoshi.hatenablog.com

要約すると、
・現在のキーボードと比較して、入力機器にコストがかけられていた時代のキースイッチ
・今はもう製造されていない
・きちんとメンテされたものは感触や音が良く、現在でも根強い人気がある
という感じです。

キーボードを趣味としている方であれば、ALPS軸の名前を聞いたことがあるという方は多いと思います。 ただその一方で、実際にALPS軸のキーボードを使ったことがある方は意外に少ないのではないでしょうか。

MalicAcid A65は、そういう方が(というか私が)気軽にALPS軸のキーボードを作れるようにというコンセプトで設計された製品です。

なお、ALPS軸のキースイッチとMX系のキースイッチには互換性がありません。MX系のキースイッチはA65では使えませんので、ご注意ください。


AEKキーキャップ専用設計

ALPSスイッチ用のキーキャップは選択肢が少なく入手の難易度も高いので、最初からAEKのキーキャップ専用としてレイアウトを考えることにしました。

使用されているキースイッチの種類にこだわらなければ、AEK自体は流通量も多く、価格もこなれているので、入手性についてはそれほど問題ないと思います。*1

AEKは35年前の製品ですが、キーキャップのデザインは今見ても素晴らしく、個人的にはとても魅力的に感じられます。

また、新品のキーキャップは1セット1万円を超える製品も珍しくありませんが、ジャンク扱いで流通しているAEKなら数千円で入手できますので 、実はかなり経済的です(しかもキースイッチ込み)。

とはいえ、キーボードを自作するために、貴重なビンテージキーボードを購入してバラすことに抵抗がある方もいるかと思います。

これについては私も悩むところですが、すでに使われていないジャンク扱いのキーボードを新しいキーボードに仕立て直すというのは、エコやリサイクルの観点からは決して悪いことではないと考えています。

とはいえ、保存状態のいいAEKはなるべくバラさず、後世にそのまま残していただけると嬉しいです。あくまでパーツ取りに利用するのは、ジャンク扱いのものだけということでお願いできれば…!


複数レイアウト対応

複数レイアウトというにはあまりにもささやかな違いですが、スペースキー右側のキー数が、1u×2個のバージョンと2u×1個のバージョンがあります。お好みのほうを選んでいただければ。

実はAEKには、スペースキーの行(一段目)で使える幅1uのキーが、矢印キーを除くと1個しかないのです。

ですので、1u×2個バージョンを選ぶと、ほかの行から1uのキーを持ってこなければなりません(写真の作例ではテンキー部の二段目のキーを使用しています)。ぱっと見わからないくらいのわずかな差異ですが、微妙にキーの高さが異なります。その点だけご留意ください。

なお2u×1個バージョンでは、テンキー部一段目の「0」が使えるので、その問題は発生しません。


Remap対応

ウェブブラウザからキーマップのカスタマイズが可能なRemapに対応しました。


頒布について

MalicAcid A65はALPS軸の自作キーボードということで需要がほとんど見込めないので、継続した頒布の予定はありません。

ただ、試作で作った基板がそこそこの枚数余っているので、こちらをキット化して安価で頒布しようと思っています。見た目が気に入ってくださったり、ALPS軸を試してみたいという奇特な方がもしいたら、よろしくお願いいたします。


まとめ

A65は、使用するキースイッチやキーキャップがビンテージの特殊なものであるという点を除けば、ごく普通の65%キーボードです。

とはいえ、キーキャップのデザイン性やスイッチの打鍵感は折り紙付きですし、35年前の古いキーボードが現代のPCで普通に使えるとこと自体が、目新しく面白い体験だと思います。

そんなわけで、私以外にもこのキーボードを気に入ってくれる人がどこかにいたら嬉しいです。

以上、簡単ですが MalicAcid A65 の紹介でした。

*1:オレンジ軸が使われている初期のAEKなどは、とんでもない値段がつくことがあります。