2021年の自作キーボード活動まとめ

2021年の私に起きたもっとも大きな変化は、生活の中に自作キーボードが入りこんできたことでしょう(侵蝕された、ともいう)。仕事の道具として本格的に自作キーボードを使うようになっただけでなく、趣味にキーボードの組み立てが加わりました。

だからどうだってこともないのですが、備忘録がわりにその過程を記録してみます。

事の発端

2020年時点での私のメインキーボードはHHKB Professional JP Type-Sと、BAROCCO MD600(日本語配列)でした。

HHKB Type-Sは打ち心地や操作性は文句なしですが、やはり一体型ゆえの姿勢の窮屈さが気になり、油断すると肩や首がバキバキになってしまいます。

一方、当時、既製品として唯一購入できた日本語配列の分離型キーボードMD600。肩こり対策としては劇的な効果を上げたものの、打鍵感は今ひとつ。少しでも打鍵感を改善するためにキーキャップを変更したり静音リングをはめたり、涙ぐましい努力の跡が残っていますが、結局、納得できる打ち心地は最後まで得られないままでした。スタビライザーがね…うるさいのよ…

また、MD600にはもう1コ不満点がありまして、それはキーマップの変更手順がわかりにくいこと。キーマップの自由度は高いものの、ひとつずつ手動でキーを入れ替えねばならず、油断すると現在のキーマップがすぐにわからなくなります。というか、なりました。それが2020年の年末あたりのことです。

しかもこの時点でMD600は終売となっており、代替になりそうな日本語配列分割キーボードも、既製品としては存在しませんでした。

ないなら作るか…

というわけで、2021年になると同時に自作キーボードに手を出すことを決意します。

sphh jp(初号機)

最初に買ったのは、日本語配列のHHKBを左右分離型にするという、私の希望そのままのコンセプトで作られたsphh jp。表面実装マイコンのはんだ付けができる気がしなかったので、おとなしく組み立てサービスを依頼しました。

結論から言うとこのキーボードはメチャメチャ当たりで、見た目も性能もいっさい不満がなく、現在に至るまで私のメイン機になっています。

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これにてキーボード探しの旅は終わり。第三部完。

…いや、本当にここで満足して終わってたらよかったんですが、最初にあまりにもいい思いをしてしまったので欲が出てしまった模様。その結果、ほかのキーボードにもうっかり手を出してしまいます。

OLKB Planck

人気の高いオーソリニア配列のキーボード。Dropで購入。

ロウスタッガードのキーボードはsphh jpで満足してしまったので、それ以外の可能性を探ってみたかったのだと思われます。

こちらはそもそもはんだ付け不要のキットなので組み立ては簡単だったのですが、完成して1時間も立たないうちに、なぜか突然ショートしてウンともスンともいわなくなりました。それまで普通に使えていたのに…

いまだにショートの原因は不明なのですが、これがきっかけで私は半完成品の、いわゆるカスタムキーボードに対して強い不信感を抱くことになります。苦労して手に入れても、どうせすぐに壊れちゃうんだろ、ばーかばーか。

BM40RGB

Planckの基板が死んでしまったせいで、Planck用のケースとキーキャップだけが手元に残ってしまいました。ケースやキーキャップはメチャメチャ質感がいいので捨てるのはもったいない。だけどもうPlanckを買うのはイヤ。

というわけで、Planckのコピー商品っぽいこいつのPCBを買ってPlanckのケースに入れました。

BM40自体は問題なく使えたものの、オーソリニア配列の40%キーボードはべつに使いやすくなかったので、現在はただの飾りになってます。

JP60SS

HHKB Type-Sをリプレースするつもりで買った日本語配列の60%キーボード。

HHKB自体には不満はなかったのですが、このころサリチル酸さんのブログ自作キーボード温泉街の歩き方を読んでおり、キーキャップやキースイッチやケースをいろいろ変えて遊びたいと思ったらしいです(のちにこれが意外なご縁につながることに)。

poker互換ケース対応なのでカスタマイズ性が高く、ホットスワップなのではんだ付けも不要。しかも貴重な日本語配列。LEDなどの派手なギミックはないものの、実用的な良いキーボードだと思います。自作キーボード初心者には自信を持っておすすめできる。コネクタがtype-Cで取り回しがいいので、現在もちょいちょい便利に使っています。

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JISplit89(借り物)

上述のJP60SSの組み立て風景をツイッターに載せたところ、サリチル酸さん(@Salicylic_acid3)がそれを見てくださって、そのご縁で貸与していただいたもの。

こちらも貴重な日本語配列の分割キーボード。初心者でも組み立てやすく、キーキャップも入手性の高いものが使えるなどの細かな工夫がされています。これから本格的に自作キーボードを始めてみたいという方には、一台目として超オススメです。

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ErgoArrows(借り物)

同じくサリチル酸さんからの借り物。カラムスタッガードという慣れない配列ながら、衝撃的な使いやすさで私を震撼させた分割エルゴノミクスキーボード。

詳しい試用レポはこちらに。

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実はいまだに借りっぱなしになっています(しかも二台も)。

社畜のキーボード 新入社員の同期

見た目のかっこいい自作キーボードには矢印キーや[英数][かな]キーが搭載されていないものが多く、イイ!と思っても買えないことが続いたため、いっそ矢印キーと[英数][かな]キーだけのキーボードを自前で用意すればいいのでは、と思いついて作った10キーのマクロパッド。

キーボードのはんだ付けは初挑戦だったのですが(エレキギターの配線などで、はんだ付け自体の経験はあった)、組み立てはとても簡単で、ニチアサを見てる間に完成してしまいました。こいつのおかげで自作キーボードの基本的な構造が理解できたと思います。

必要最低限の部品しかないので打鍵感などはお察しですが、後述のSesameを借りたときなどには外付け矢印キーとして期待通りに活躍しました。現在も普通のマクロパッドとして、ノートPCで電子書籍を読んだり、Zoom会議のときなどに重宝しています。

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Re64_Rev2(借り物)

ErgoArrows などの試用レポを見てくださったくしま8さん(@kushima8)が、レポ用として貸してくださったキーボード。

ロータリーエンコーダーを搭載したHHKB配列の分離型で、多機能ながら実用性に優れています。Zilent v2との相性が抜群で打ち心地がとてもよかった。

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Re42(借り物)

同じく くしま8さんからお借りした42キーの分割オーソリニアキーボード。可愛らしくて見た目が大変よいです。コンパクトで、40%オーソリニア好きならたまらないと思う。

Sesame(借り物)

Alice配列を試してみたいとワガママを言って、サリチル酸さんに貸してもらったキーボード。

たしかにロウスタッガードの一体型よりもかなり打ちやすく、Alice配列の人気の秘密はわかった気がします。手首を支点に、ちょうど円を描くような感じで打鍵すると特に指が楽。あと見た目がメチャメチャかっこいい。

ただ矢印キーがなかったり、小指で押すキーを遠く感じたりとキーレイアウトの細かいところで不満があり、Alice配列絶対欲しい!という感じにはなりませんでした。そう、この時点では。

Nafuda

サリチル酸さんに基板をいただいたので、部品を集めて勝手に組み立てたマクロパッド。

見た目に反して硬派なマクロパッドで、表面実装のダイオードやスイッチソケットのはんだ付け、ファームウェアのコンパイルなど、組み立てにはそれなりの技術と知識が要求されます。特に採用されているLEDが悪名高いSK6812MINIというヤツで死ぬほど苦労しました。

ですが、これを作ったおかげで、自作キーボードへの理解はかなり深まったような気がします。

sphh jp(弐号機)

ご時世的に仕事場に通う機会が減ったので、予備機を兼ねて自宅用として購入した2台目です。

仕事場では音漏れを気にして静音スイッチを使っていましたが、自宅なので気兼ねなく音が出せるということで、お気に入りのHako Violetを採用。あとePBT Modern JAというお高いキーキャップで組み立ててあります。そのおかげか、指先でランドグシャ喰ってるみたいな官能的な打鍵感が楽しめます。現在のメインキーボードのひとつ。お気に入り。

ErgoArrows

サリチル酸さんからお借りしていたサンプルがあまりにも素晴らしく、自分専用のが欲しくなって作ってしまった魔改造ErgoArrows。日本語配列キーキャップ採用、ソケット化、PCBとボトムプレートの間にウレタンを挟んで剛性アップ、逆チルト化などが主な変更点。

この当時ErgoArrowsで使える日本語配列キーキャップがMT3の/dev/ttyしかなく、傾斜がきつくて使いにくかったので、底面に5mm厚のアルミ板を張り付けてキーボード全体を逆チルト(手前側のほうが背が高い)状態にしてあります。

その結果、キートップが完全にフラット化して打ちやすくなっただけでなく、キーボードの安定性も上がって打鍵感がとてもよくなりました(逆にErgoArrowsの長所である薄さは失われ、パームレストが必須になってしまった)。

この辺りのカスタムは、ErgoArrowsの設計者であるサリチル酸さんがNaked64SFというキーボードで試されていた内容にかなり影響を受けています(剛性の変更による打鍵感のカスタマイズ、ウェイトを仕込んで重量アップ、逆チルト化など)。同じ作者のキーボードなので参考になるだろうという安易な考えながら、結果的にすごく良くなったのであながち間違いではなかったはず。

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この魔改造ErgoArrow、使いやすさや入力性能では手持ちのキーボードの中でも断トツで、これが完成した結果、フルキーボードであるRealforce for Macの出番が完全になくなることに。長文の日本語入力だけでなく、英文・数値入力や、だらだらネットや動画を眺めたいときなど、ありとあらゆるシチュエーションで最高の操作性を誇っています。現状、私の中ではもっともエンドゲームに近いキーボード。

LEDが76個も必要なのですが、使っているのが足つきのSK6812MINI-Eなので、Nafudaに比べると組み立ては格段に楽でした。またLEDのはんだ付け用に、あらかじめ融点が低くて細い電子工作用のはんだを用意しておくなど、Nafudaで苦労した経験が生きています。

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Tenalice Ambidextrous

Cerbekosさん(@Cerbekos00)設計のテンキーつきAlice配列キーボード。

一体型ながら分割タイプのように主要なキーが左右にわかれていて、その中央にテンキー部が、左右両手で使えるように45度傾けて配置されています。

他のAlice配列キーボードに対して私が感じていた不満が見事に解消されていて、紹介画像を見た瞬間、欲しい!絶対買う!ってなりました。

レイアウトは特殊ですが、キーボードキットとしては非常にオーソドックスな作りで、比較的 組み立ての難易度は低め。そのぶん静音性と見た目にこだわって作りました。

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来年の展望

今年作ったキーボードはそれぞれ愛着もあり、性能的にもほぼ満足しているのですが、なぜかほかにも購入済みのキットやパーツがいくつかあるので、もうしばらくはキーボード沼(温泉?)に浸かったまま過ごすことになりそうです。

この記事はTenalice Ambidextrous(白)で書きました。